side N

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店内は落ち着いた感じで、音楽も照明の落とし具合も嫌味がなく、ゆったりとした空気が流れていた。 騒がしい客もいないし、マスターの雰囲気も良い。 飛び込みで入った店にしては当たりだろう。 にしても……。 「なかなかさめないですねぇ」 「酔いがですか?」 「夢からです」 「夢ではないですが」 「またまた~」 フカフカ過ぎて沈んでしまうくらいのソファに座り、ローテーブルを挟んで向き合っている小宮さんは、ケタケタ笑いながらファジーネーブル風ノンアルコールジュースを飲んだ。 もれなくグラスの底にコースターをつけながら。 彼女はお酒だと思っているが、注文した時にこっそり店員に変更させていた。 ほんの少しだけだが、呂律も戻ってきたような気がする。
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