side N

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「だって、南条さんと社外でこんなふうにふたりきりになるとか、現実ではありえませんもん」 「私も想像していませんでしたが」 「あ、想像なら私、何回もしてましたよ」 「どのような?」 「このような」 彼女は身を乗り出して流れるように俺の左手を取り、自分の頬にゆっくりと重ねる。 「………………」 「………………あれ?」 驚いて目を見開いていると、俺の手のひらに顔を預けていた小宮さんが、じっとこちらを見つめたまま、何度も瞬きをした。 「けっこう生々しいなぁ」 「…………生ですので」 「ほわ?」 言葉がおかしい。 行動もおかしい。 …………でも。 「……」 このふにふにした頬は大福よりも柔らかく、冷房がきいているというのに温かく、俺は違和感があり過ぎるそのままの構図で数秒間静止した。
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