3206人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「……南条さん」
「はい」
「これ、あれですか?」
「どれですか?」
「“見つめあったまま近付いてキス”やじるし“このまま帰したくない”やじるし“ホテル直行”やじるし“入るなり壁ド……」
「小宮さん」
「はい」
「手を離してくださいませんか?」
「嫌だ。気持ちいいもん」
「一旦離してください」
「じゃあ、頭撫でてください」
「……」
不条理な交換条件をつきつけられ、小さなため息とともに、仕方なくもう片方の手で彼女の頭を撫でる。
「ふふー」
小宮さんは満足そうに笑っている。
2席離れたところに座っている女性3人組が、変な目でこちらを見ているのがわかる。
店員も気になるようで、チラチラとこちらを窺っている。
マスターだけは見て見ぬふりをしてくれているが。
最初のコメントを投稿しよう!