side N

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「……南条さん」 「はい」 「これ、あれですか?」 「どれですか?」 「“見つめあったまま近付いてキス”やじるし“このまま帰したくない”やじるし“ホテル直行”やじるし“入るなり壁ド……」 「小宮さん」 「はい」 「手を離してくださいませんか?」 「嫌だ。気持ちいいもん」 「一旦離してください」 「じゃあ、頭撫でてください」 「……」 不条理な交換条件をつきつけられ、小さなため息とともに、仕方なくもう片方の手で彼女の頭を撫でる。 「ふふー」 小宮さんは満足そうに笑っている。 2席離れたところに座っている女性3人組が、変な目でこちらを見ているのがわかる。 店員も気になるようで、チラチラとこちらを窺っている。 マスターだけは見て見ぬふりをしてくれているが。
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