side N

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「そうか……。お前、本当の愛を知らないのか。不憫な色男だな」 堤課長が涙を拭く真似をしながら、俺の肩を寄せる。 「まぁ、でも、南条レベルだと、寄ってくる女は自信過剰タイプか、それ以外は気後れとか緊張で話弾まないタイプか、2極化してそう。本人自体に恋愛願望がない分、ちゃんとした彼女できるのって難しいだろうな」 羽島課長は、腕を組みながら、うーん、と小さく唸る。 ……ちゃんとした“彼女”。 想像がつかない。 ……というより、自分の中での“彼女”というワードは、煩わしさや不自由さを連想させるもので、そんなものに時間や手間をかけるくらいなら、家で読書でもしているほうがよほど有意義だと思える。
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