side N

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「あ、課長……と、南条さんまで」 「あ~! かっちょさん!」 テーブルの横に立った俺たちに気付いた杉中さんの声に被せ、小宮さんの上機嫌な声が響く。 羽島課長はテーブルの男性達に軽く挨拶をし、 「小宮さん、そろそろ戻りましょうか」 と促した。 「へへー。このテーブルのお酒、美味しいんですよ」 「どのテーブルでも同じだから」 「課長さん、小宮さん面白いから、もう少し貸してくださいよ」 小宮さんと羽島課長のかみ合わないやりとりに、彼女の前に座っている男が割り込む。 俺は、先程彼女の肩を握っていた時と同じような、そのニヤニヤした顔を眺めた。 そして、彼の左手を見た。 指輪をはめていたであろう部分だけが日焼けしておらず、若干白くなっている。 おそらく外してきたのだということがうかがえる。
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