side N

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『“撫で友”になってくださいませんか?』 2ヶ月前の彼女の発言。 あの時、小宮さんと仕事以外でふたりきりになることはそうないだろうと思った俺は、『社外でこんなふうにふたりだけになったとき限定ならいいですよ』と答えた。 けれども、そう返しておきながら、月曜日に彼女が何も覚えていないことを知ったとき、安堵と脱力に隠れて妙な心地がしたのを思い出す。 それは名前が付けられないほど微かな感情だったが、今もまた、それとなくそれに似た感情がほのかに香った気がした。 「離してもらえますか?」 「はーい」 意外にも即座に手を離し、両手を上げた格好で微笑んだ小宮さん。 「夜は寒いですので、そろそろ帰――」 「あ! ベンチ座りましょう! 公園のベンチ!」 「……」
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