side N

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「楽しかったーーー」 顔を戻した彼女は、子どもみたいに笑いながら、両手を上げて伸びをする。 そして、立ち上がり、ふうっ、と満足げな息を吐いた。 本当に年上だとは思えない、ころころ変わる無邪気な表情。 「……」 向き合って立ちながら、その30センチほど下にある顔を眺める。 気付けば俺は、右手を彼女の頬に重ねていた。 「ん?」 「……小宮さんは」 「はい」 「“撫で友”が欲しいんですよね?」 「えぇっ! なんでわかるんですか? ていうか、南条さん、その言葉知ってるんですか? 意外!」 「……」 やはり前回のことを完全に忘れている。 リセットされたのだ、記憶が。 ほんの少し、また形容しがたい心持ちがして、俺は彼女の柔らかな頬を僅かな力で優しくつまむ。
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