side N

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「これやってみたかったんです」 ふふ、と満足そうに笑う小宮さん。 彼女の柔らかい髪が首に当たったけれど、俺は何も言わずに窓の外の通り過ぎていく景色を眺めた。 …………大きく振り回されている自覚がある。 彼女とは飲み会の最中での会話など、ほぼ無いに等しかった。 一方で、古賀さんとはじゃれ合い、ふざけ合い、弾けるような笑顔と声で、とても楽しそうにはしゃいでいた。 それなのに、ふたりだけになった途端にこうだ。 古賀さんがいなくなったからと、甘える相手に優先順位をつける猫のように、それすら許せるような表情と言葉と行動で、俺を…………。 「……」 いや、違う。 小宮さんは……小宮さんだけは例外だ。 そんなしたたかさなど全く持ち合わせていない。
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