side N

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商品を選び終えてレジに並ぶ。 並ぶと言っても、すぐに目の前の客は払い終えて去っていったが。 「お待たせしまし…………た」 いつぞやの若い男店員が、俺に気付いて表情を変えた。 あいにくレジにはたまたま彼ひとりだった。 金額を言われ、財布を開いていると、ふいに、 「彼女さんですか?」 と横の小宮さんへ視線を移して聞かれる。 「いえ」 短く返すと、 「そうですか」 と、レジの彼はあからさまにホッとした顔をした。 「…………」 俺は千円札を出しながら、そんな安堵をされても困ると思ったが、ここで念押しするかのように断るのも変な気がして、そのまま何も言わずに外へ出た。
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