side N

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「あ! 見えてきた。うちのマンションの前、公園あるんですよ。春になると……」 「桜がキレイで、カップルが多くて、毎年ため息なんですよね?」 「……あれ? その通りです。言いましたっけ?」 「はい」 俺は白い息を吐いて、積る空しさを逃がした。 毎回記憶喪失を起こす小宮さん。 慣れてはきたものの、あの夜の会話の相手は今どこにいるのだろうと、ため息を重ねる。 「あの入口の階段のところで食べましょう」 「はい?」 「あの飲み屋、正直言って腹6分にも満たなかったですよねー」 そう言いながら、着いた階段の3段目に早速よいしょと座り、俺から受け取ったコンビニ袋からガサゴソとカロリーメイトを取り出す小宮さん。
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