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「わーい」
そのままぎゅっと腕を背中に精いっぱい伸ばして俺を抱きしめ、ドスンと胸の辺りに頭をぶつけてくる小宮さん。
「……」
金曜の夜。
人通りの少なくない飲み屋街の小路。
店の真ん前。
古賀さんが課長にじゃれている声。
俺は両手でそっと彼女の手を離し、課長のほうへと振り返った。
彼らはこちらをまったく見ていなかった。
「課長、小宮さん飲み過ぎてるみたいなので、タクシー拾って帰ります」
「あ? 行かないの? 南条」
「はい。送ります」
「あそ。じゃあ、よろしく。おつかれ」
片手を上げた課長の横で、まだ巻きついている古賀さんも「おつかれっすー」と言って手を振る。
会釈をして向き直った俺は、小宮さんの手を握って歩き出した。
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