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「ん? はれ?」
課長たちと俺とを交互に見ながら、驚いた表情をしている小宮さん。
ボコボコしている石畳の道で足がもつれそうになりながらも、俺が手を引いているため転びはせずに、トコトコと懸命についてくる。
飲み会の締めなのか、集団で笑い合っているスーツの人たち。
電話をしながら歩いている男。
カラオケ店に入っていく男女4人組。
通り過ぎてはまた目に入る、人と店の灯り。
耳に入る雑多な声や音楽。
俺の歩くペースの2倍のリズムでついてくる、彼女の靴音。
今、確かに大通りのタクシー乗り場へ向けて歩いている。
ひたすら歩いている。それだけだ。
後ろめたいことなど何もないのに、この逸る気持ちは何なのだろうか。
12月の週末の夜の空気がそうさせるのか。
それじゃあこの、握る手の熱さはどちらのものなのか。
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