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「あれって、あのカフェバーに行く流れじゃなかったんれすか?」
「そんなに酔っているのに、はしごさせるわけにはいきませんので」
タクシーの中、小宮さんがぼやいている。
かれこれ4回は繰り返している。
「なんで私の思い通りにならないんだろ」
「……また夢だと思ってるんですか? 現実です」
「またまた~。現実だったら南条さんと手を繋いでるのおかしいですもん」
「……」
俺は静かに視線を落とし、いまだ握ったままだった彼女の手を見た。
「そうですね」
と言って、すっとその手を離す。
ずっと手の内にあった熱を逃がしたことで、予想以上に手のひらがひんやりとした。
すると同時に、今度は肩に温かみと重さが乗っかってきた。
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