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「うわぁっ!」
急に、びくりと体を振動させて手を離す小宮さん。
見ると、彼女はまるでハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「あれ? え? えっと……、ゆ、め……ですよね? じゃなきゃ、おかしいですよね?」
ちょうど酔いが醒めてきたところだったのか、それとも今の感覚で意識が呼び戻されたのか、彼女はひどく狼狽している。
確かに口調ははっきりしてきていた。
「夢ですよ」
ためらいもなく答えた自分が怖かった。
そんなことよりも、離れた彼女の体温をもう一度手中におさめたかった。
本当のことを言って、逃げられたくなかった。
衝動的で、ひどく身勝手なこの心の内の熱を、彼女に見せるわけにはいかない。
だから、努めて沈着に彼女の肩に手を伸ばし、こちら側へとゆっくり寄せる。
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