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そもそもの仁科サラとの縁を作った張本人に何も返せずにいると、彼女と堤課長は楽しそうに談笑し始めた。
ハーフの美人を前に、堤課長は鼻の下を思いきり伸ばしている。
俺は「お先です」と言って会計を済ませ、その足で出口に向かった。
振り返ると仁科さんはこちらへ来ようとしたが、堤課長に引き止められ捕まってしまったので、俺は小さく会釈をしてひとり外へ出た。
『傘を返しそびれたので、またの機会に』
「……」
食事の礼と共にそう添えられたメールに気付いたのは、会社に戻ってデスクに着いた後だった。
俺は肘をついて眉間をつまみながら目をつむり、盛大なため息をついた。
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