2900人が本棚に入れています
本棚に追加
仁科サラから電話があったのは、俺が小宮さんへの気持ちを自覚した次の週だった。
取材協力してほしいということ、そして傘を返したいとのことで、食事に誘われた。
気乗りはしないものの、仕事の話が絡むので断れず、昼食でよければと了承した。
「すみません。何度も」
「いえ。こちらこそ、うちの会社の近くの店にしていただいて申し訳ないです」
「申し訳ないだなんてとんでもないです。私、ここのお蕎麦屋さん一度来てみたかったので。今日はありがとうございます」
深々とお辞儀をして席に着く仁科さん。
一続きの座敷で、隣の席とはのれんで仕切られているため、半個室になっている。
「それじゃあ、さっそく……」
注文してすぐに、仕事に関しての質問が始まった。
威勢の良い店員の声をバックに、俺はできるだけ簡潔に分かりやすく回答し、説明することに徹した。
最初のコメントを投稿しよう!