side N

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「本当は夕食が第一希望だったんですけどね」 「……」 さらりと意味深なセリフ。 どう返答しろと言うのだろうか。 やはり読めない彼女は、ニコニコしたまま箸を進める。 「食を共有するって生の営みだから、関係性もぐっと近くなるらしいですよね」 「……そうですか」 「お鍋なんか特にいいらしいですよ。今度は美味しいお鍋のお店ご一緒しませんか?」 「…………」 「ぜひ!」 急に右手を差し出され、箸を持つ手を止めた。 なぜ、食事中に握手など……。 そう思いながらもないがしろにできず、自分もハンカチで拭いた右手を差し出す。 すると、きゅっと握られ、約束だというように少し揺らされた。
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