side N

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諦める……。 たしかに、そうすべきなのだろう。 断られているのだから。 でも……。 『今だけなら』 無理だと言われたのにもかかわらず、お酒の入った小宮さんに言われた言葉と、受け入れられた抱擁に、自覚して間もない心は翻弄されたままだ。 「……」 わかっている。 自分がその状況を利用しただけだということは。 朝になれば、その度に魔法が切れるのだということは。 素面の小宮さんの俺に対しての態度は“無理”そのもので、触れることはおろか、目を合わせることも、業務外の話をすることすらままならない。 彼女から拒否オーラが出ているのだ。 他の社員に対する雰囲気とはあきらかに違う。
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