side N

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話をしたくても、小宮さんの居心地の悪そうな表情を前に、すぐに踵を返してしまう。 そもそも自分は口下手で、ましてや意中の異性にアプローチをするなどということ自体……。 「……さん? 南条さん?」 「……あぁ、すみません」 気付けば何度も呼ばれていたようで、顔を上げると正面にいたはずの仁科さんは俺の横まで来ていて、左肩に手を乗せていた。 「不躾な質問をしてしまってすみません。食べ終わったので、もう出ましょうか」 「いえ。……はい、会計を」 「わっ」 共に立ち上がろうとしたところ、バランスを崩した仁科さんがこちらへ倒れてきて、咄嗟に抱きかかえるが、隣との仕切りののれんが捲れてしまった。
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