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「え……」
壁に向けられている間接照明が反射して、南条さんの顔も僅かにキラキラして見えるけれど、その表情はやっぱり私にはよくわからない。
「ワインはいける口ですか?」
「は……はい」
「どうします?」
ふっと南条さんの視線が私の目を射抜いた。
再開したピアノの曲は、とても優しくて、それでいてどこか切ない音色。
視界の右上で緩やかに回るシーリングファンが、まるで指揮をとっているかのようだ。
「……」
束の間の沈黙を作ってしまった私は、その一瞬がとても長く感じられた。
さっきは自分から言い出したのに、なんとなく怯んでしまうのはなんでなんだろう。
「は……い。じゃあ、い……いただきます」
そう返事をした私は、なぜか生唾を飲んでいた。
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