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「っ……」
間髪入れず、私は顔を俯けて南条さんの手から逃れていた。
下へ向けた顔に熱がどんどん溜まっていく。
夢の中でキスされたことを思い出した。
手を握られた熱さを思い出した。
ペンを走らせるくすぐったさを思い出した。
夢なのに。
夢のはずなのに。
恥ずかしさと緊張がピークに達し、顔を上げることができない。
こんな真っ赤なのぼせ上がった顔、見せるわけにはいかない。
「小宮さん」
「あの……ホントに……大丈夫です、ので」
あの窓際に座ってる女性二人組、こっちを見てクスクス笑ってる。
私と南条さんのアンバランスさを、私の挙動不審で滑稽なさまを笑っている。
あの奥の席のカップルもだ。
身分不相応の王子に情けをかけてもらっている庶民の図に、憐れだなって同情してるんだ。
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