side N

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「……」 間違いなく彼女は酔ったままだった。 けれども思い描いていた流れと、なにかが違う。 「服の上からでいいので……羽織ってください」 なぜか照れながらそう言った彼女の目は、それでも期待でキラキラと輝いていた。 「……小宮さん」 右手をゆらりと差し出し、バスローブを受け取った俺は、苺大福のようにほんのり色付いた彼女の頬を眺める。 「それじゃあ……、交換条件、呑んでいただけますか?」 「交換条件?」 首をかしげる彼女の頬に、指でそっと触れる。 「忘れないでください」 「え?」 バカげた取り引き。 半分覚えていたとしても、きっと彼女は夢でのことと片付けてしまうのに。 「忘れるわけないじゃないですか」 それなのに、小宮さんは笑うのだ。 屈託もなく。  
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