side K

11/35
前へ
/35ページ
次へ
「今の話の流れで、“私何かしませんでしたか?”って聞けばよかったじゃないですか」 「無理無理無理無理……」 身を屈めて小声で聞いてきた三浦さんに、私はひきつった顔で念仏のようにそう繰り返す。 それにしても……。 「……」 そっけなかったなぁ……と、ぼんやり思った。 ……そっけない?  いやいや、そっけないなんてことはない。 今までもこんな感じだった。 なのに、どうしてそう思うんだ。 その理由を思い返してみる。 昨日、食事に行ったこと、辻森さん達にばったり会ったこと、南条さんとの会話が続かなかったこと。 「……」 あぁ……そうだ。 私、言ったんだった。 “緊張する”とか“恐れ多い”とか、……面と向かって。 それに、ハンカチを差し出してくれた優しさも、無下にして……。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2841人が本棚に入れています
本棚に追加