2841人が本棚に入れています
本棚に追加
ちらりと前の席を覗くと、ノートパソコンを開いてなにやらファイルをめくっている、完全仕事モードの隙のない南条さんが目に映る。
「……」
王子は……笑わない。
王子は“N”なんて書かないし、私なんかにキスなんてしない。
そもそも、“私なんか”って思ってる人間のことを、好きにはならない。
わかりきっていることをぐるぐる考え巡らせてしまうのは、私が南条さんを夢で見過ぎるからだ。
欲求不満もいいところな腐った女が、リアルを充実させられないからって、妄想を充実させるすべを会得してしまったからだ。
「はぁーーー……」
ため息は幸せを逃がすって言うけれど、私はいつもそれを、ため息をついた後で思い出すんだ。
最初のコメントを投稿しよう!