side K

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ちらりと前の席を覗くと、ノートパソコンを開いてなにやらファイルをめくっている、完全仕事モードの隙のない南条さんが目に映る。 「……」 王子は……笑わない。 王子は“N”なんて書かないし、私なんかにキスなんてしない。 そもそも、“私なんか”って思ってる人間のことを、好きにはならない。 わかりきっていることをぐるぐる考え巡らせてしまうのは、私が南条さんを夢で見過ぎるからだ。 欲求不満もいいところな腐った女が、リアルを充実させられないからって、妄想を充実させるすべを会得してしまったからだ。 「はぁーーー……」 ため息は幸せを逃がすって言うけれど、私はいつもそれを、ため息をついた後で思い出すんだ。      
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