side K

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「……っ」 しまった、口に入れすぎた。 「ぐっ」 トントンと胸を拳で叩くと、涙が出てきた。 苦しかったからだ。苦しかったから……。 「うっ……」 ポロポロと、丸っこい滴がケーキの上に降りかかる。 やだ、塩味になっちゃう。もったいない。 “あれは鑑賞用。ただの憧れ。アイドルと一緒” “いやいや、憧れであって、そんな好きだなんて大それた……“ なぜだか、自分に言い聞かせていた言葉の数々が頭の中でひらひらと踊る。 「……っ」 そしてそれらは、薄いセロファンのようにくたりと地面にうなだれ、もう何の意味もなさなくなった。
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