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ふたりともたたずんで向かい合ったまま、何も言わない。
何も言えない。
なにか、なにか……。
あ……。
「そ、そういえば、南条さんの中1のときの初恋って、たしか学校の先生でしたよね?」
思い出したことを思い出したままに口に出した私の言葉は、静かな廊下に空しく響き、また沈黙を呼ぶ。
「……」
……しまった。
妙な空気の濃度を上げてしまった。
けれども意外だったのは、南条さんの顔。
あまり表情に出さない南条さんが、驚きで固まっている。
「覚えているんですか?」
「はい。ていうか、やっぱり」
やっぱり話したことがあったんだ。
でも、いつどこで話したんだろう。
だいぶ前かな?
うーん……思い出せない。
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