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「大丈夫ですか?」
新聞紙に包まれた白菜を手に取って真ん前まで来た南条さんは、もう片方の手を私にスッと差し伸べた。
「……」
は……白菜王子……。
でも、やっぱり…………似合わない……。
見上げてそう思った私は、3回ほど瞬きをした後、ハッと我に返って彼の手を取る。
「すみませんっ、ホントに」
こんなアホ庶民なんかに情をおかけくださって……。
「……」
……ん?
「……」
「……」
…………あれ? まただ。
ちゃんと立ち上がれたのにもかかわらず、また、手を繋がれたまま離されない。
「あ、ありがとう……ございました。」
俯いてお礼を言いながら、懸命にこの状況を客観視する。
深夜の独身女性宅に進入した独身男性、および、つながれた手と手。
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