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同じく、なにやら考え込んでいた南条さんは、伏せた瞳をまた私へと戻して、ゆっくりと口を開く。
「今日言った“彼女”のことも、誰のことか……わかりますか?」
「……」
“彼女”との言葉に、少しだけ体がこわばった。
その心情を表すかのように、寒さで家がピシンッと軋む音を上げる。
私の頭の中に、イブの日のことがじわりと甦りだす。
それは……堤課長に聞いたし、それに現場も見たから……。
「はい。わかって……ます、けど」
あ。ヤバ……。
途端にジクジクとした痛みをぶり返す胸。
あぁ、こんなフラグが立ったようなおいしい状況も、南条さんが酔っているからだということと、彼女がいるっていう事実だけで帳消しになる。
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