2634人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
……ん?
あれ?
ウソ。
表情こそ鉄仮面なのに、彼女の話題になった途端、南条さんの耳が……ちょっと、赤くなった?
「……か、彼女のこと、好きなんですね」
うまく笑えただろうか。
背の高い南条さんを下から覗き込みながら、私は聞きたくもないことを聞いている。
「……まぁ」
「すごく?」
「かなり」
「…………」
あーーーーー………………そう。
ごちそうさま。
途端に私の眼前に透明な幕が下りてきた。
多分今、私の目は死んでいるだろう。
「小宮さ……」
「ア……ハハハハ、いいですね~。うん、いい! いいな~、恋人。でも実は私もですね、やっぱり辻森さんの誘いに乗って、ふたりで食事に行っちゃおうかなーなんて思ってて。取引先の人とそういうのは、って南条さんおっしゃいましたけど、南条さんもほら、ねぇ? 純愛を夢見るような歳でもないから、ほら、数打ちゃ当たる精神で私もどんどん動かなきゃ」
最初のコメントを投稿しよう!