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い……いくらなんでもわかる。
だてに妄想してきていない。
この状況は……あれだ。あれ。
「し、下心とか、まさか、あの、私なんかに持ち合わせていらっしゃるんですか?」
最終手段、おちゃらけの術を使って無理やり笑顔を作る私。
それでも南条さんは動じず、
「ないとでも思いますか?」
と答えた。
ま、待って。反則だ。
酔っているにしても、こんな……こんな……。
「……」
…………彼女、いるのに、手近な女を、つまみぐい、みたいな、こんな状況…………。
「…………」
サラさんの姿が頭に鮮明に映ったとき、私の唇に柔らかさが掠めた。
……かと思うと、角度をずらして押し当てられ、これがキスなのだということを私の脳に伝える。
冷蔵庫にコツンと頭がつけば、この一瞬を切り取ったような静寂がふたりを包んだ。
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