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「10年前から男関係がないとか、撫で友がほしいとか、春はそこの公園を見ながらため息をついているとか」
「……」
「眼鏡をつけてほしいとか、思い出が不純物だとか、呪いを解く方法とか」
「……」
「初恋以外で私とした話、思い出せますか?」
南条さんが、伏せていた顔をゆっくりと上げる。
「さっきのキスも」
目が……合う。
「何回目だか、わかってますか?」
「…………」
冷蔵庫に押し付けられていた私の手はようやく解放されたけれど、まるでまだ強く拘束されてるかのように貼り付いていて下ろせない。
間近にある端正な顔が傾き、またキスをされると思って瞼を硬く閉じると、その口は私の自惚れに反し、頬を掠めて耳元で止まった。
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