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冷たくなった手の指先をゆっくりと口へ運び、その唇の輪郭をなぞる。
『何回目だか、わかってますか?』
「何回目……って……」
ガチャッという音が、私にはとてつもなく大きな音として響いた。
瞬時に玄関のほうを向き、目を見開く。
「ねぇちょっとお姉ちゃん! なんで鍵かかってないのよ! 不用心だよ」
南条さんが戻ってきたと思って疑わなかった私は、あーちゃんの姿を見て、咄嗟に浮かせた腰をヘナヘナと落とす。
拍子抜けして、口が開いたままだ。
「なにその顔。てか、なんでそんなとこに座ってんの? また酔っ払い?」
玄関を上がりながら文句を言うあーちゃんも、ほろ酔い顔。
私はいまだに動けない。
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