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言い合いをしているふたりをよそに、俺は飲みかけのグラスをまた空にした。
「…………」
何杯目だろうか。
いつもそこまで酔わないのに、今日はやけに回る気がする。
美味しくはないくせに、手は止まらない。
「大丈夫ですか? 顔色も悪いし、そのくらいにしておいたほうがいいんじゃないですか?」
正面に座る時峰さんが声をかけてきて、俺はグラスから手を離し、「そうですね」と答えた。
辻森さんと堤課長は仲良くも白熱しながら言い合いを続けており、こちらの会話は耳に入っていない様子だ。
「当たってると思いますよ」
なんの前置きもなく時峰さんに言われた言葉。
俺は、落としていた視線をゆらりと上げて、
「……なにがですか?」
と聞き返す。
「南条さんが予想している、辻森さんの姫」
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