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清々しいほど正直な堤課長。
俺は辻森さんらの手前、文句を言うでもなく「そうですか」と、抑揚なしに頷いた。
「堤さん、はじめまして。時峰と言います。お言葉に甘えて辻森さんについてきました」
「あー、キミが時峰君。ツジが言ってた色男ね。って、俺んとこの色男には敵わないけど」
「勝てる気しませんよ、ハナから」
時峰さんと堤課長の談笑をただただ傍聴していると、課長がこちらに向き直って睨んでくる。
「おい、南条。なんとか言えよコラ。“そうですね”とか“今からナンパで勝負します?”とか」
「滅相もないです」
「ホント面白みのねーやつだな。まぁ、そこが面白いんだけど」
笑い合いながら小さなテーブルを囲み、届いたふたつのビールジョッキに日本酒のグラスで乾杯する。
こういうノリは傍観するに限る俺は、一歩引いた心持ちで酒を口に運んだ。
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