side N

7/16

2494人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
清々しいほど正直な堤課長。 俺は辻森さんらの手前、文句を言うでもなく「そうですか」と、抑揚なしに頷いた。 「堤さん、はじめまして。時峰と言います。お言葉に甘えて辻森さんについてきました」 「あー、キミが時峰君。ツジが言ってた色男ね。って、俺んとこの色男には敵わないけど」 「勝てる気しませんよ、ハナから」 時峰さんと堤課長の談笑をただただ傍聴していると、課長がこちらに向き直って睨んでくる。 「おい、南条。なんとか言えよコラ。“そうですね”とか“今からナンパで勝負します?”とか」 「滅相もないです」 「ホント面白みのねーやつだな。まぁ、そこが面白いんだけど」 笑い合いながら小さなテーブルを囲み、届いたふたつのビールジョッキに日本酒のグラスで乾杯する。 こういうノリは傍観するに限る俺は、一歩引いた心持ちで酒を口に運んだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2494人が本棚に入れています
本棚に追加