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「小宮さん」
三浦さんのほうを向いて完璧に油断していた私は、いつの間にかデスクに戻ってきていたらしい南条さんの声に大いにビビり、
「はっ、はいっ」
と、素っ頓狂な声で返事をする。
びっくりした。いつの間に……。
「すみませんが、今日、これとこれの入力と、この件についての先方への確認、それと……」
向かいのデスクから少し身を乗り出して、今日の業務について説明をくださる南条公。
今までとなんら変わらない指示の仕方と語調に、私も落ち着きを取り戻して「はい、……はい」と相槌を返す。
やっぱり南条さん、普通だ。
私も……普通だ。
もしかしたらなにもなかったのかもしれない。
……なにもなかったことにできるのかもしれない。
だってお互いもういい大人なんだし、あの日はお酒が入ってのことだったし、今までのこともお酒のせいだし、失恋さえ私が乗り切ればそれで…………。
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