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「…………」
小宮さんの言葉に、空気の色が変わった。
年が明けてから互いにずっと触れなかった壁に触れてきた彼女は、弱々しいながらも続ける。
「いろいろ……思い出しました。ぜ、全部じゃないですけど、ところどころ……あの……」
「たとえば?」
「じゃんけん……したこととか、コンビニに行ったこととか……」
「……」
「私の唯一の元カレの話をしたこととか……、南条さんには以前長くつきあった年上の魔……彼女さんがいて、誰のものにもならないで的なことを言われたってこととか……」
顔を隠すために毛布を握っている彼女の両手が、ゆっくりと上がっていく。
「前髪下ろしてもらったり、着せ替えさせたり、私のリクエストに応えてもらったりとか……」
「……」
「多分ベルトを忘れたっぽい日のことも……あ、曖昧ながら……少し……」
小宮さんはとうとう顔を全部隠してしまった。
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