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「それで……」
こもったその声が少し上擦って聞こえ、俺はゆっくりとその毛布を剥いで彼女の顔を出した。
恥ずかしそうにしているものの顔色は回復しておらず、俺は、
「無理して話さなくてもいいですよ。もうしばらく眠っていたほうがいい」
と諭し、身を屈めて彼女の頬に手の甲でそっと触れた。
少しひんやりとした皮膚だったが、俺の体温を吸収してすぐにぬるくなる。
すると、目を閉じた小宮さんの目尻から俺の手に、ひと筋の涙が伝った。
「……それで……すみません。……全部、なかったことにしてください」
「……」
「バカなことをして、本当にご迷惑をおかけしました。今後はそういうことがないようにしますので、これからも仕事の良きパートナーとして……」
「小宮さん、俺は」
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