side N

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「よろし……く、おねが…………し……ます」 すー……と、溶けていくように小宮さんは眠りに落ちた。 わかっていたことを改めて口頭で伝えられただけなのに、燻って消すことができないでいた火に水をかけてもらえたというのに、俺はしばらく彼女の頬に触れたまま動けなかった。 一瞬だけ記憶を共有したかと思えば、今度は即座にそれを抹消しろと言われて……。 「……」 ……誰がそんなことをできるというのだろうか。 自分を嘲るように「……ハ」と笑い、ゆっくり、ゆっくりと彼女の頬から手を離す。 先程、堤課長が小宮さんに渡した辻森さんの名刺。 俺はそれを自分の背広のポケットから取り出し、その裏に書かれてある電話番号とメールアドレスをじっと見つめた。
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