side N

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観葉植物の横の壁に背を預けて缶を開けた俺は、 「あれから、もう、ご相談事はないのですか?」 と、静かに尋ねた。 「……そうですね。今日、なくなる予定です」 「そうですか」 コーヒーをひと口飲んで、植物の鮮やかな緑に目を落とす。 羽島課長と三浦さんも、傍からはわからない様々な事情と感情を持て余しているのだろう。 「……アホですよ」 「はい?」 「男は。みんな」 「……」 もうひと口飲んだ缶コーヒーの飲み口を見つめる。 「南条さんも……ですか?」 「先頭集団にいるかと」 「ハハ」 三浦さんは笑った。 半分冗談のつもりで言ったそれは、紛れもない事実だった。 自分を形容する言葉として、これほどふさわしいものはないだろう。
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