side N

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「だから、三浦さんもたまにはそれに合わせればいい」 「……アホになれと?」 呆れたような、おかしさを逃がすような顔をしてそう返した三浦さん。 羽島課長も彼女も、おそらく互いに同じ気持ちだろう。 本音を持ち寄れば、多分ふたりのため息は明日には消えているはずだ。 ……他人のことなら、こんなにもよくわかる。 『当事者じゃないから一歩引いた目で見れるんです。渦中の人間は、本人でさえも自覚できないことが多いし、気持ちのコントロールもできない』 「……」 小宮さんの言葉を思い出し、そのとおりだと微かな笑みがこぼれた。 そのままコーヒーを飲み干して壁から背を離し、缶をゴミ箱へ入れた俺は、ゆっくりと顔を上げる。
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