side K

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「……前回と同じ薬でよければ、今から買ってきますが」 こんなときにまで王子対応。 私は慌てて断ったものの、その優しさに泣きそうになる。 少し体をずらしたことで、私の制服のポケットに忍ばせておいたメモ紙が、カサ……と小さな音を立てた。 『南条君を……知ってるんですか?』 同時に、一昨日会った彼女の声が甦る。 彼女は多くを語らなかった。 ただ、昔の知り合いなのだと、どうしても話がしたいのだと、この連絡先を書いた紙を渡してきた。 「……」 ちょうどいいじゃないか。今渡せば手間も省ける。 「よかったですね。呪い、解けますよ」って、冗談のひとつでも言って、ドラえもんみたいにポケットから出せば、鉄仮面の南条さんももしかしたら吹き出してくれるかもしれない。
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