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「え? ケーキに目を奪われて見てなかった。どれどれ?」
身を屈めてコソコソ話をしながら、レジ前に戻った彼女を小さく指差す。
「ほら、あ……」
「えっ!? あれ、南条実篤のっ――」
彼女の顔を見るなり腰を浮かせて大きな声を出したあーちゃんは、途中でパッと口を覆い、“ヤバイ”という顔をして、ゆっくりと腰を下ろした。
「…………も、元カノ。お姉ちゃん、あの人だよ。南条実篤の大人美人元カノ。私のバイト先に来てた人」
「……」
私はあーちゃんの今更な小声を聞きながら、レジ前に立つ彼女を見ていた。
当然店に響いたあーちゃんの声に、数人いたお客さんとともに、店員である彼女もこちらへ注目。
……驚きの表情を浮かべて。
私はパッと視線を外して、ケーキを見る。
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