side K

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尋常じゃない胸の高鳴り。 説明しがたい不安と焦り。 そして顔を上げてようやく彼女の表情を見ると、今度は切なさが移ってきて胸が押し潰されそうになった。 「南条君を……知ってるんですか?」 「はっ! えっ、ええっと、はい! 姉が! 同じ職場のようで」 それを聞いた彼女は、あーちゃんが指差した私のほうへとゆっくりと顔を移す。 こ……これは、儚げな表情も手伝って、いっそう美人に見える。 こんなとこでレジを打ってちゃいけないほどの美しさだ。 「本当ですか?」 今にも涙を落としそうな彼女の瞳に、私はまるで場違いな映画のワンシーンに紛れ込んでしまったかのような気持ちになった。 ここで、“違います”と嘘を言う権利や勇気があっただろうか。 私は、乾いた口を開け、 「…………はい」 と、消え入りそうな声で答えた。      
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