2889人が本棚に入れています
本棚に追加
私につき合わせてあんなことまでさせてしまった今までの失態をちゃんと謝って、この紙を渡そう。
優しい言葉も、貴重な微笑みも、勘違いしてしまいそうなキスも、全部忘れて、これっきり、ホントに、気持ちに蓋をして……。
「……南条さん」
「はい」
「……すみませんでした」
私はぽつりぽつりと思い出したことを並べていった。
話しながらやっぱり自分が情けなくて恥ずかしくていたたまれなくなり、毛布を握る手が上がっていった。
「私の唯一の元カレの話をしたこととか……、南条さんには以前長くつきあった年上の魔……彼女さんがいて、誰のものにもならないで的なことを言われたってこととか……」
あれ? やばい。
なんか、鼻の奥やら喉の奥やらが痛くなってきた。
「前髪下ろしてもらったり、着せ替えさせたり、私のリクエストに応えてもらったりとか……」
思い出しながら話すもんだから、その時の気持ちが甦ってきてしまう。
あの日、あの時の私が、嬉しくて幸せだったっていうことを、今更訴えかけてくる。
『苦しいけど、気持ちいいです』
『恋人同士みたい』
ダメだ。
話しながら新たに甦ってくる記憶の中で、私が笑ってる。
南条さんの体温に包まれてぬくぬくしながら、ずっとこのままでいたいなーって、のん気にも幸せそうに笑ってる。
「多分ベルトを忘れたっぽい日のことも……あ、曖昧ながら……少し……」
耐え切れなくなって、顔をすっぽり毛布で隠す。
最初のコメントを投稿しよう!