side K

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『あの……10年ぶりなんですけど』 『なにが?』 『こういうのが……』 何度も髪を梳かれたせいで、ほぼ丸裸になった私の額に優しく口付ける南条さん。 『……複雑なので、そういうことは言わないでください』 「ねえってば! お姉ちゃんっ」 「うわっ!」 瞬時に戻ってきた店内のざわめきと音楽。 横に立ってプンスカしているあーちゃんが、 「それ買うの?」 と言って覗き込んできた。 「え?」 手に握っていたのは、売り物のベルト。 見渡せばここは、街中のセレクトショップだった。 土曜日の今日、久しぶりにあーちゃんと一緒に買い物に来たのだ。 「う、ううん。買わない。てか、あーちゃんは会計終わったの?」 「終わったよ。何か甘いもの食べて帰ろう」
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