2994人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハ……」
目の前で、南条さんが声を出した。
……というか……。
「ハハ」
鉄仮面がくしゃっと歪めば、目尻にシワが寄り、まるで少年のように屈託のない笑顔が披露される。
南条さんが…………南条さんがっ…………声を出して笑ったっ。
「わ……わら、…………わら、う、とか……」
「あの人からは、謝罪されました」
顔は戻したものの、柔らかい雰囲気をまとっている南条さんが、私との間にポンと言葉を置く。
「ずっと俺とのことが引っかかっていたそうです。10代の頃から振り回したこと、歪んだ関係を何年も続けたこと、一方的に会わなくなったこと。そのことが俺の気持ちにどれだけ垢や傷をつけたか、彼女なりにずっと悩んでいたらしい。本当は心があったからこそ」
「…………」
最初のコメントを投稿しよう!