side K-2

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俯いたままでいると、両手で両頬をやんわりと包まれて、その顔をゆっくり上へと向かせられる。 親指で少しだけ残っていた目尻の涙がぬぐわれ、私は右目だけ一度瞑って、そのまま視線を泳がせた。 あぁ、わかる。 体中の熱がぞろぞろと顔一点目がけて音速で集まってくる。 さっきとは違う色と温度の熱。 電話の時がピークだと思っていた動悸も、数倍になって体の内側を破れんばかりに叩きまくる。 この状態で視線を合わせるなんて無理に決まっている。 そんなのができる人は、よほど自分に自信のある猛者だ。 「好きだって言いましたよね?」 「や、あの」 「言った」 「だから、その」 心臓の爆音、異常発熱、過剰な瞬きに、発汗過多。 体中が誤作動を起こしているみたいだ。 にしても、なんだこの南条さんは。 人のこと言えないけど、子どもみたいだ。
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