side K-2

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「なんじょ……」 「確かに言った、小宮さん」 頬を固定されたまま、今度こそ正真正銘の壁ドン……いや、資料棚だから、棚ドン?  この際どちらでもいい、とにかく逃げ道を失った。 唇の下のくぼみに添えられた親指で撫でられ、まるで猫にでもするような仕草にすら心拍が跳ね上がる。 笑ってはいないけれど細められたその目から、南条さんの気持ちが流れ込んできたような気がした。 ゆ、夢を見て……いいのだろうか。 いや、夢じゃダメだ。 現実を見て、はっきりしっかり見て、それで……。 何度もためらって、小さく開きかけては閉じる口。 何度かそれを繰り返した私は意を決して、 「南条さん、あの、き、記憶違いだったらすみませんけど、わ、私のこと、あの、す、好きだって……言いました?」 と尋ねた。
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