side K-2

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もう、これ以上はないってくらいにきつく抱き締められてそう言われると、苦しさと感情の大流出で言葉に詰まり、まるで蛇口でもひねったかのように次々と新しい涙が溢れてきた。 「はい」すらろくに言えない私は、何度もこくこくとうずもれた頭で頷く。 そして、そのせいで涙を南条さんの背広になすりつけてしまったことに気付き、「うぅ」と呻きながら目をぎゅっと瞑って涙をこらえた。 嘘みたいだ。 あーちゃんの「お姉ちゃん、起きて」って声で、今にも目が覚めてしまわないかハラハラする。 でも、服を隔ててさえ伝わってくる鼓動は本物で、それは夢だと思っていた記憶とおんなじで、それ以上に強い力で抱きしめられていて、私にリアルを訴えかけてくる。
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