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いまだに互いの空気はぎこちなくて、この距離感に気持ちがついていかない。
でも、離れがたくて、このこそばゆさを持て余しながらも、南条さんの緩めた腕の中に居座っている。
「前髪が……少し落ちてますね」
見上げると、軽く固めている南条さんの前髪が数筋、無造作に落ちてきていて、私はその髪を耳にかけようと背伸びをした。
咄嗟にしたことだったけれど、後から思うと我ながら向こう見ずだった。
「駐車場から……走ってきたので」
私が耳元へ伸ばした手を南条さんの手が覆って、そのままゆっくりと剥がされる。
かと思うと、手の甲に唇をつけられて、それは手首へと下りていった。
「……」
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